この話は汚部屋をただキレイにする話ではなくて、掃除片付けが出来ない家に主人公が出向き、部屋の要らないものを捨てるのと同時に何が問題なのか?を原因を考えながら指導する4つの短編集。
「部屋を片づけられない人間は心に問題がある」と考える主人公の大庭十萬里。
心に問題、そうかもしれない。
天気が曇りなだけでやる気が無くなる。晴れただけで、朝から洗濯掃除がしたくなる。
気分次第でやりたくなったり出来なくなったりするくらいだから、心の奥底に問題があったら片づけ掃除どころでは無いかも。
4つの話の登場人物の本人は片付けを希望していないのに、その家族が大庭十萬里に依頼する。
なぜ汚部屋になったのか?その心に踏み込み、嫌がられながらもテキパキとアドバイスし、宿題を出していく。
①OL春香は社内不倫だったけれど、上手くいかなくなり、部屋の中は服や靴、食器などモノがあふれ、床が見えない。掃除はしないので埃まみれの上、ゴミが貯まったまま出していない。
不倫相手の男にも、同僚の女友達にも利用されることを大庭十萬里に指摘され、惨めな自分に向き合っていく。
②妻に先立たれた老人展蔵は、家事は何も出来ないし、妻の遺品も整理していないけれど、近所に住んでいる娘が毎日家事をしに来てくれるので家の中は片付いている。
けれど娘の方が疲れきっていて、娘の家庭で問題が起きてしまう。
2つの家の家事をやるって想像しただけで大変。
妻に先立たれた場合、夫は家事で出来るようになっておかないと。
③田舎の資産家の老婦人は主婦として今までちゃんとやってきた自信がある。
戦争を体験した世代はモノを捨てられない。何でも取っておいて一生使いきれないほどの日用品を買い置きしている。
家というよりお屋敷なので収納場所もたくさんある分、抱えているモノの量も半端なく多い。
その処分を心配する都会で暮らすなかなか帰って来ない子ども達。子どもにも孫にも捨てられたと勝手に思っている事と向き合わされる。
④公務員宿舎に住む主婦の家は荒れ切っている。昔はきちんとしていたのに、、、
2人の娘も荒んでしまっている。
でも一室だけとてもキレイになっている部屋がある、、、この話が一番深刻で辛い。
我が子を亡くした悲しみや絶望から抜け出せないままの主人公に涙が出る。
目を背けていた問題に向き合っていくには、1人ではなく仲間がいれば泣きながらでも乗り越えていけるかも。
この大庭十萬里さんの仕事っぷりは素晴らしい。