昭和55年小説新潮に1年間掲載された13編の短編集。40年以上前の作品。
直木賞受賞作「かわうそ」「犬小屋」「花の名前」が収録されている。
高校生~社会人の頃に向田邦子脚本のテレビドラマを見ていた。
若かったあの頃の方が面白く見ていた気がして、年を取ってから読んだ今回の方が難しかった。
結末がわからないまま終わって、その後どうなるのかわからない、考えさせられるのが多く、とにかく難しかった。
浮気の話が多い。
普通に生活している昭和の中年の日常なんだけど、人ってこんなにやましかったり、裏があったり、後ろめたい事があるのか、、、
まぁ何事も無い家族なら小説にならないんだけど、、、
「思い出トランプ」という話は無くて、短編が13あるからトランプになったのか、、、な?
「かわうそ」脳卒中の夫を支える可愛い妻の獺祭ぶりがすごいけれど、最後にわかる残酷さがかわうそだった。
「だらだら坂」美人ではない愛人を囲って通う話。口数の少ないその愛人が美しくなって自立していく話。
「はめ殺し窓」娘が、不倫していた自分の母親に似たことを心配する父の話。心配しすぎでオロオロしている。
「三枚肉」昔、不倫関係になった部下の結婚式に夫婦で出席する話。後半訪ねてくる旧友と牛肉の話が意味深で面白かった。
「マンハッタン」妻に逃げられた男が近所に出来るスナック「マンハッタン」に期待しすぎている情けない男の話。
「犬小屋」やたらと熱心に犬の世話をしてくれる近所の魚屋の青年と飼い主の家族と昔一時期交流があった回想。
「男眉」たくましい眉毛「男眉」の姉が、優しい眉毛「地蔵眉」の妹を羨ましがっている話。
「大根の月」主人公の英子が息子を怪我させてしまい、その後別居になった夫婦の話。
「りんごの皮」医者の恋人がいる姉と地味な弟の昔の回想とその正反対さを最後に焼き魚の匂いとりんごで表現している。
「酸っぱい家族」飼猫が銜えてきた鸚鵡の捨て場所に困り探し回る話。それ以外にまだ捨てる物があるというわからない話。
「耳」体調不良で会社を休み、水枕の音を聞きながら昔の事を思い出す話。これもよくわからなかった。
「花の名前」花の名前や一般常識を教える妻の言いなりになって来た夫だけれど、、、
「ダウト」父の葬式に従兄弟が来てから、思い出す過去の嫌な事の話。
13編書いてみたけれど、もう人間の悲哀や裏表や矛盾が凄すぎて、読み終わった後にうす暗く嫌な感じがする。
恥ずかしながらわからない話が多いのは、言葉に出来ない心情の描く筆者の巧みな文章が読み取れない、理解出来ないという自分の読解力の無さ。
その中でも「大根の月」は良かった。これが一番印象に残る。
応援したくなる話だった。