北大医学部入学後に見えてきた日本の女性の地位に絶望したことが渡米を考えるきっかけになったという著者。
小児精神科医、脳科学者、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、そして3児の母としてアメリカで活躍されている。
こんなに聡明で素晴らしい日本人女性がいることを知らなかった。
コロナ禍での第3子妊娠中にワクチン接種し、日本への発信で中傷を受け、その事についても書いてある。
コンパクトな新書だけれど、中身はぎっしり。
とても深くて難しいテーマが多く、今、自分がアメリカに住んでいるからか最後の最後まで考えさせられる内容だった。
更にアメリカの事はもちろん、この年齢(還暦近く)になっても知らない日本の事が書いてあって勉強になった。
第1部は炎上についてで、社会でいったい何が起こっているのか? SNSでの炎上、人種や性別、年齢、国籍、経歴いろいろな属性の分断や差別について、分かりやすく説明してくれている。
自分の意見が他人の都合の良いように捻じ曲げられたり、本筋では無い所で攻撃されたり、ダメージが大きい理不尽な経験、論理の捻じれ、心理操作の説明など分かりやすかった。
Whataboutism(あなたはどうなのよ?)
Gaslighting(悪いのは被害者?)
「他者の靴を履く」という英語の定型表現で「自分で誰かの靴を履いてみること」という言い回し(Stand in someone’s shoes/ Put yourself in someone’s shoes)の共感の話等々
著者自身の日々の具体的な例もいろいろ書いてあり、その中で幼い息子の「相手を下げても自分は上がらないよ」というのは名言だ。
第2部は差別と分断についてで、アメリカの同意教育や子どもを信頼する勇気では「もう一度子育てやり直したい」と思わされた。
日本での女性はこうあるべき、アメリカでの”有害な男らしさ”などの思い込みの話やアメリカのバスケットやフットボールのスポーツ選手、ハリウッドでのアジア人男性の話、Black Lives Matter、Asian Hate、様々な差別の話はとても考えさせられる。
また日本の女性を苦しめる労働環境の章では、医学部入試の女性差別について書いてあった。
アメリカに来て1年ちょっとの私が思った事で「病院で感じたアメリカの凄いところ」では女性医師が多く、皆バイタリティー溢れる素敵な女性だったと書いた。
その女性達の事を「私よりも遥かに苦労をしたであろう、多くの先輩の女性医師やリーダーの存在」と書いている。
日本もアメリカも世界中の女性達が苦労して、男女平等を目指している。
私がこの本を読んで知らなかった事の1つに日本国憲法の草案のことがある。
そこに女性の権利を入れてくれた22才の若いアメリカ女性がいたことなど、何も知らなかった。
この時にこの女性の権利が入らなかったら、日本で今でもある男女格差はもっともーっと開いたままだったかも。
普段から感じる女性差別、海外に出るとすごく感じる人種差別。
著者が書いているように、自分のことも相手のことも尊重しながら、分断や差別を少しずつでも乗り越えられたらいいけれど、、、
3児の母でリーダーシップを取る女性医師としてアメリカで頑張っている著者からヒントとパワーを貰った本だった。
ちょっと難しかったので、もう一度読み直したい。